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この街のイメージ

~稲穂祭の裏側編~

稲穂祭の朝。今年も午後一一時から旧山陽道花岡界隈に「狐の嫁入り行列」が練り歩くのである。日頃は人通りが少なく、自動車が時折東西に通り抜ける静かな町並みに幻想的な雰囲気が漂う大切な一日である。 くだまつから全国発信できるな祭稲穂祭「狐の嫁入り」も復活して六ト数年を迎えた。昔の写真を見ると、田園風景に嫁入り行列の様子があり、新郎新婦が歩いているのである。そして、親族はタバコを吸いながら新郎新婦の後をついていくというのどかな雰囲気が醸し出されている写貞がある。今も昔も、煌びやかな行列を支えるスタッフは、花岡福徳稲荷社奉賛会、周辺の自治会・団体等の方々が中心となっている。 この祭りに関わるスタッフの打合せは、年一回数十分であり、このわずかな時問の打合せが祭りを左右するわけである。つまり、この祭りに対する日常的な意識が高いスタッフによる完令分業制が祭りを支えているのである。例えば、わずかな自分の役割であれ、そこに全身全霊情熱を注いでいるのである。これがまちづくりの原動力であり、そこに祭りの原点があるのではないだろうかと思う。 幼稚園の年長のときだから、四十年も前のことであるが、白粉を塗り手繰り、紅をさし、次第にキツネの顔になっていく自分自身の顔が非常に怖かったような気がする。その顔で鼓笛隊の大太鼓を乱打し、周りの人に叩き方を注意されたと振り返る。そして、いわゆる結婚披露宴では子狐役で大げさな泣きのシーンをやるわけである。続いて、餅まきを行い、人切な一目が終わったような気がする。最後に出店で買ってもらったタイヤキは美味しかった。これらは、僕の幼児期の貴重な体験であり、毎年この時期に必ず蘇ってくる大切な思い出のひとつである。 思いきった発想とアイディアに資材を投じて復活した昭和二十五年の「稲穂祭」。これをまちづくりの原点とした地域コミュニティには、これからも必要不可欠な催事なのである。 僕は、行列の進行係として、長年関わっているので、当日は行列を進めるのが業務である。一方で、僕の自治会は、周防花岡駅前で、午後三時頃に餅まきを行うわけであるが、その餅まきの担当自治会なのである。これは、祭の復活時から続いている役割である。色鮮やかに装飾されたトラックから餅をまくわけであるが、この餅をまく人も高齢化し、「遠くに飛んでこない。」と不評が続いているのが現状である。莫大な個数の餅をまくわけであるので、人数もト分に確保しないといけないし、まくことのできる人は自治会関係者に限定されており、誰でもいいというわけでもないのである。 今年は、進行係の合間に、餅まきをやってみようと思う。そして、遠くにたくさん撒いてみたい……顔に当たってケガのない程度に。